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2004.2.3-27 : 香川久士 「港」・「岩」 プリント

香川久士 作品展 「港」・「岩」

2004年2月3日(火)〜27日(金)

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展示内容:
香川久士がモノクロームの写真に至る道筋には、写真家にとって「表現とは何か」という問いかけがありました。

大学卒業後にテレビカメラマンになり映像を扱う世界に入った香川は、一般的に広く受け入れられるような映像の方が重視されるという現実を知り、映像で自己表現する場として写真を選びました。当初カラー写真を撮っていた香川はやがて、自分でプリントまで出来る白黒で写真を撮るようになり、アンセル・アダムスの著書「ザ・ネガティブ」を教材として白黒写真を勉強するうちに、月が月であり、木が木である描写性を知ることになります。奇抜なカメラアングルなどを映像表現と考えていた認識の甘さを思い知ったのでした。そして視覚的表現を根本から考え直すべく、芸術家が古くから認知されているヨーロッパへ留学する事を決意し、1997年に会社を辞めルネッサンス発祥の地フィレンツェへ渡りました。美術専門学校の写真コースでゾーン・システムなど撮影技術と暗室ワークの基礎を学びながら、時間があると美術館に行き絵画や彫刻などを見て過ごすうちに、彫刻や建造物など人の手によって作られたものを写真に撮るときに写真家の表現性は必要なのか、という新たな疑問が湧き起こります。そして、その答えを今度は写真の古典技法の中に見出そうと考えました。古典技法の一つであるブロムオイル法を学ぶため、香川は1998年にイギリスへ渡りワークショップに参加し技術を習得しました。ブロムオイル法は、ストレート・フォトグラフが登場する以前のピクトリアリズムの時代に使われた技法ですが、この技法をとおして香川は「作品を作るためにあらゆる技巧を凝らす」というピクトリアリズムの理念を知ったのです。それは、写真で表現することを追い求めてきた香川にとって、写真を撮る行為自体を疑問視させる結果となり、その矛盾に苛まれることになります。そのため、質感だけを変化させ、元の写真とあまり変わらないストレートなブロムオイル・プリントを作ることを心がけましたが、作品として注目をあつめるのは写真そのものではなく、ブロムオイル法という技術でした。日本に帰国して作品を発表した時もやはり、このことが顕著に表れ、「作品自体を見てもらうにはどうしたら良いのか」と模索するようになりました。そんな時に出遭ったのが、2001年にロンドンのテイト・モダンに展示されていた杉本博司の“劇場”シリーズでした。映画の上映時間の間シャッターを開き続け、 スクリーンと劇場風景を淡々と記録するといった作品は、写真本来の特徴を生かしているだけでなく、作者の意図も明確に示しているは大きな驚きでした。このことがきっかけとなり、作品には明確なコンセプトが必要であり、現代の人工建造物も立派な作品になり得る事に気づいたのでした。

このような道のりを経て香川は、どのようなコンセプトであっても、「事実を集め、それらの事から本質を知ること」を視覚的に表すことに興味を持つようなりました。「人間は多くの情報を眼から取り入れて、興味のあるものと無いものへと瞬時に区別している。それは、たとえ見えていたとしても興味が無ければ、存在していないことと同じである」と、香川はこの概念的な「存在」を写真にして考えようとしています。今回展示される作品は、身近な海岸にある「港」と「岩」を撮影したものです。「港」、「岩」は作者にとって特別な被写体ではありません。二つの対象「港」と「岩」は日常の生活において特別な興味を持たれることがないということが共通していて、敢えて言うならば存在の希薄な対象です。しかし、個々では印象の薄いものでも同じ様なものが集まることで互いに密接な関わりが出来上がり、その結果としてその存在が増していく、ということを作者はあえて主題を明確にするために、基本に戻りストレートな表現に適したゼラチン・シルバープリントで制作しています。30余点から成る一連の作品を展示いたします。

出展作家:
香川久士(かがわ ひさし)
1971年 名古屋に生まれる。1993年 北海道大学水産学部卒業後、あいテレビ(愛媛県)に勤務。1995年 あいテレビ(報道制作部)を退社。1997年 放送技術社にて新潟テレビ21の制作カメラマンを経てフリー。イタリアの美術学校で写真を学ぶ。1998年 イギリスでブロムオイル技法を習得する。2001年ヨーロッパより帰国。現在、愛媛県北条市在住。
主な個展に"Edge of darkness" 東京写真文化館(2002年)、"Something there" 東京写真文化館(2003年)がある。

 
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