三好耕三

繭 MAYU

2019.1.8 (火) - 2.23 (土)
PGI

三好耕三

繭 MAYU

2019.1.8 (火) - 2.23 (土)
PGI

  • ©Kozo Miyoshi

  • ©Kozo Miyoshi

  • ©Kozo Miyoshi

  • ©Kozo Miyoshi

  • ©Kozo Miyoshi

  • ©Kozo Miyoshi

 三好耕三は、1970年代に写真家としてのキャリアをスタートさせ、1981年から8×10インチ判の大型カメラでの撮影を始めました。

これまで数多くの作品を生み出してきた三好は、1980年代に「Innocents 天真爛漫」、「Picture Show 傍観」、「Conservatory 温室」、など日本人や日本の原風景を捉えた作品を発表した後、90年代には5年間、米国アリゾナ州ツーソンに滞在し、「Southwest」、「Chapel」、「CACTI」、「Airfield」、などの作品を発表、綿密な描写による独自の写真世界を広げていきました。

2009年からは16×20インチの超大型カメラに持ち替え、旅の途上で出会う光景に、一会の傍観者として対峙するスタイルで、旅と撮影を続けています。

また「ROOTS<NE>」や「CAMERA」、「SABI」シリーズなど、これまでにも旅と旅の合間に、決まった場所と光でひとつのモチーフを見つめることがありました。

 本作「繭 MAYU」は、旅の途上、ある出会いで繭農家を訪れたことがきっかけとなって、ひととき足を止めて撮影されました。

2015年、いつもの旅の途中で拾ったひとつの繭に導かれるように繭農家を訪ねた三好は、障子を隔てて差し込む光の中で、蔟(まぶし)と呼ばれる使い込まれた升の中に、白く丸い繭がひとつずつ並んでいる様を目にします。

ベストなタイミングと最高の光で撮影する、そのネガを持ち帰り、それをプリントした時、白く美しい繭がどのように自分の写真に現れるか、この時すでに興奮とともに知ったのでしょう。「最初に見た時、これをこのように撮ると決めていた」と語っています。

養蚕は、古く紀元前に中国から伝わり、明治時代の隆盛期を迎え、その後、昭和の初め頃まで、日本経済を支える重要な産業のひとつでした。古くから伝わる方法と、長く使いこまれた道具に大切に育てられた、なんとも言えない愛らしい曲線と美しい絹色の繭玉ですが、自然と、人間の生活の関わり合いの中で、時に経済に翻弄された時代もありました。そこには、人間と自然の関わり合いの美しい部分、暗い部分の両方が潜んでいます。

撮影は、試行錯誤を重ね、蔟に収まった繭を、光の中で正面から捉えています。ただ美しく繭が並ぶのではなく、背後にある永い時間に対峙するような作品です。

 

モノクロームプリント30余点を展示いたします。是非ご高覧下さい。 

 桜花の時期も過ぎ、今年も春蚕の時期が巡って来た。近頃、彼の地の山懐の町村の養蚕の営みを覗き見に通っている。いつも思うのだが、少しわくわくの誘惑と、なのになんだか少し物思いになってしまう訪問なのだ。子供時分、毎年この季節になると裏の土手に1本だけ、大きめの葉がしげる木があった。その木は小さな実をつけ、熟したその実は堪らない秘密のおやつだった。熟したその実を口一杯に頬張り、その雫が白いシャツに滲みこんでいくことにすくみ、登り慣れたその木から降りる事になるのが常だった。そしてその傍らの枝に薄黄緑色のわた玉を数個見つけだすことも小さな喜びだった。勿論その当時、その子は、桑木と蚕と繭の関係を知る由もなかった。そして時が過ぎ、昔は狭い峠道を超えなければ行けなかった織り物が名産だった街に寄り道をした。その街外れで、両手で抱える大きさの篭一杯の繭を持つ少女に出会った。そしてその娘は、私の大きな写真機に気がつくと、ひととき興味の目でいたが、ふと我に帰り、小道の先の農家の庭に駆け帰っていった。その時一つの繭が篭から転げ落ちた。拾い上げたその繭は、真夏の昼下がり、峠の山並みの先の夏空に沸き立つ入道雲より、目映く白く輝いていた。

 国道から右角にコンビニがある十字路を左折して窪地をしばらく行くと、三方は丘に閉ざされ行止りの土地にその繭農家はある。瓦屋根には卯建があり、軒の全ては雨戸で覆われ、等間隔に開けてある雨戸の間からは白い障子が見えている。小径の前の畑には桑木が春蚕、夏蚕、秋蚕で使われて半数以上が切り取られ、程よい加減に生い茂り、整然と畝を作っている。別棟の白壁の蔵の前にある分厚い板戸を心して引き開ける。そこには幾万の繭が、幾百の蔟(まぶし)に納まって淡い障子からの光に照らされて、晩秋の繭掻きを待っている。そしてその時、蚕部屋の陽射しが微かに騒めき、午後の静寂が打ち消され、裏の欅の梢でモズが鳴いた。私の再訪に家主が気付いたらしい、季節外れのダリアの花を仏壇に挙げるのだろう、片手で握りしめ、もう片方で姉さん被りの手ぬぐいを一払いして、板戸を背に眴せ顔で佇んでいる。

三好耕三

三好耕三(みよし こうぞう)

1947年生まれ。

近年の主な個展に「On the Road Again」PGI(2017年)、「RINGO 林檎」PGI(2015年)、「SABI」フォト・ギャラリー・インターナショナル<以下P.G.I.>(2013年)、「1972〜」gallery916(2013年)、「YUBUNE 湯船」P.G.I.(2012年)、「櫻」1839當代画廊(台北2011年)、「SEE SAW」P.G.I.(2010年)、「SAKURA 櫻覧」P.G.I.(2009年)、「津々浦々」P.G.I.(2007年)、「Tokyo Drive 東京巡景」P.G.I.(2006年)、「Seagirt海廻り」P.G.I.(2004年)、 「SAKURA 櫻」P.G.I.(2003年)、「CAMERA 写真機」P.G.I.(2002年)、「Tokyo Street 横丁」P.G.I.(1999年)、「In The Road」P.G.I.(1997年)がある。

2017年「Longer Ways to Go」(フェニックス美術館)、2015年「In the Wake: Japanese Photographers Respond to 3-11」(ボストン美術館)、2014年「スピリチュアル・ワールド」(東京都写真美術館)、2012年Amherst College Mead Art Museum展覧会「Reinventing Tokyo: Japan’s Largest City in the Artistic Imagination」展に参加。

作品は東京国立近代美術館や東京都写真美術館、ジョージ・イーストマン・ハウス国際写真美術館(U.S.A.)、アリゾナ大学センター・フォー・クリエイティブ・フォトグラフィー(U.S.A.)、ヒューストン美術館(U.S.A.)などにコレクションされている。

 

 

PGI Exhibitions

2017.9.5 10.28 On the Road Again
2015.10.27 12.26 RINGO 林檎
2013.10.8 11.16 SABI
2012.11.6 12.22 YUBUNE 湯船
2010.11.4 12.22 SEE SAW
2009.11.25 12.25 SAKURA 櫻覧
2007.10.10 11.10 津々浦々
2006.4.5 5.19 東京巡景
2004.9.3 10.15 海廻り
2003.4.1 4.25
2002.4.3 6.1 CAMERA  – 写真機 –
2001.9.3 9.29 富士登 ふじのぼり
1999.11.8 12.22 「横丁」
1999.1.11 2.10 「In the Road」
1997.9.24 11.14 「In the Road」
1996.10.1 11.15 「CACTI Landscapes」
1995.9.28 11.10 「カクタイ」
1995.9.1 9.29 「飛行場」
1994.6.2 7.15 「Southwest」
1993.10.5 11.10 「Chapel」
1992.8.27 9.30 「タイ・ループ」
1989.10.3 10.31 「温室」
1987.11.5 12.5 「傍観」
1985.10.3 10.31 「天真爛漫」
1983.9.9 9.30 「See Saw」
1979.10.11 10.20 「Exposure」