久保田博二

アメリカとビルマ

2009.9.9(水) - 10.17(土)
Photo Gallery International

久保田博二

アメリカとビルマ

2009.9.9(水) - 10.17(土)
Photo Gallery International

  • ©Hiroji Kubota/Magnum Photos

世界を舞台に活躍する写真家集団「マグナム」に所属し、ただひとりの日本人メンバーである久保田博二氏は、これまで多くの国々を駆け巡り取材してきました。氏が写真家として国際舞台で活動するきっかけとなったのは、人々との出会いと、2つの国アメリカとビルマ(註)でした。

 

1961年にマグナムの主要メンバーの日本での取材を手伝う機会があり、彼らの仕事ぶりに魅了された久保田は写真家になろうと決心しました。そして翌年、家族の反対を押し切って、ライカM3と2本のレンズを持ってニューヨークへ渡りました。自由に渡米することが許されなかった時代のことです。E. アーウィット氏が身元保証人となり、アメリカでの写真生活が始まりました。1963年からアメリカ各地を訪れた久保田は、最初の訪問地、首都ワシントンで「ワシントン大行進」の場に居合わせるという体験をし、また、先住民が居住する南西部や、南部を訪ねました。自分が日本人である事を意識させられた最初の撮影旅行でした。67年まで滞在するなかで、ベトナム戦争を境にアメリカが著しく変わっていく様を目の当たりにしました。その後、一時帰国していた日本で任せられた仕事の成功報酬で、世界一周旅行の機会を得た久保田は、1968年、東京からニューヨークを経由して、西ヨーロッパ、中近東、インド、ビルマ、タイと香港を10カ月以上かけ旅をしました。何よりも世界の多様性と複雑さに驚かされた忘れられない体験だったと振り返ります。

 

そして、1969年には復帰前の沖縄を取材し、ベトナムへ派兵される米軍の兵士だけではなく、沖縄の人々の取材にもそれ以上の時間を費やした久保田は、彼らの独自の生活、文化などにふれ、その格調の高さに感動しました。この時、自分がアジア人であることに気づかされ、これからはアジアを中心に仕事をすべきだと心に固く決めたと語っています。アメリカで写真家になった久保田は、アメリカかぶれしていたに違いない自分に沁みこんだ「アカ」をまず洗い流すために、アメリカと最も対極にあるアジアの国はどこかと考え抜きました。ある時、それはビルマだとの結論が出ました。

 

1970年からビルマに通い始めた久保田は、78年までの間に70回ほどビルマを訪ねました。かつて東南アジアで最も豊かであったこの国の人々は、軍事政権のひどい圧政下のもとでも信仰深く、優しく、そして考えられないほど寛容であり、そのような人々に久保田は感銘を受けました。このビルマ撮影はやがてアジアの撮影に繋がり、1975年 サイゴン陥落取材を契機に、久保田は「アジア」と本格的に取り組むようになりました。1978年秋からは、「中国全省」と「北朝鮮」の長期取材を同時に進行しました。久保田の写真人生のABC(イロハ)はまさしく、アメリカ(A)、ビルマ(B)、チャイナ(C)でした。

 

本展は、久保田博二氏がアメリカとビルマで撮影したモノクローム作品70余点を展示いたします。これらの作品は、1976年に開催された「アメリカンピープル」(銀座ニコンサロンほか)と1978年の「静思のビルマ」(銀座ニコンサロンほか)で発表された作品も含まれていますが、当時に制作されたマスタープリント(全点非売)で再構成したものです。
久保田博二氏のアジアの作品は、現在清里フォトアートミュージアムでダイトランスファープリントが展示されています。併せてご高覧ください。

 

(註) 現在の国名はミャンマーですが、本展では撮影時点の「ビルマ」で表記しております。

今回展示するマスタープリントは全点非売のため、オリジナル・ゼラチン・シルバー・プリントを元にアメリカとビルマから各15イメージをそれぞれ30部限定でアーカイバル・インクジェット・プリントを制作いたしました。

オンラインストアでもお求めいただけます。
 
オンラインストア「アメリカとビルマ」リプロダクション・プリント

久保田博二 (くぼた ひろじ)

1939年東京に生まれる。1962年早稲田大学政経学部卒業。1965年写真家集団「マグナム・フォト」に参加。主な個展:「On China」(I.C.P.ニューヨーク 1985年)、「From Sea To Shining Sea アメリカの肖像」(日本、アメリカ、中国、およびアジア各地で巡回展示 1992-1997年)、「Can We Feed Ourselves? アジアと食料」(東京、フィレンツェ、ニューヨークなどで巡回展示 1999-2001 年)、「アジアの映像」(フォト・ギャラリー・インターナショナル 2001年)、「久保田博二 ダイトランスファー・プリント作品展」(キヤノンギャラリーS 2005年)、「久保田博二 アジアの肖像」(清里フォト アートミュージアム 2009年)。