展示内容: その後20余年を経て、三好は海に囲まれた日本の「海めぐり」を本格的に開始することになる。青森、秋田、山形、新潟、兵庫、島根などの海岸を何度も訪れて撮影された一連の写真作品は、旅を通じて作者が思うことを余すことなく伝えている。 数々の旅の中で出会ったある漁村について、作者は次のように回想している。「その漁村は国道から大きく反れて、冬になると荒波があらう海岸線の合間を這うようにたどる細い砂利道と断崖と、中程に神社を据える裏山にしがみつくように位置していた。その湊に最初に訪れたのは夕日が雲の合間から見え隠れしながら防波堤の向こうに沈みかけている時分であった。その時は名を知ることもなかった湊の入り口に鎮座している立岩を背景に、学校帰りの子供たちに出会い、そして陽が沈み湊を後にした。それから二十数年の間に幾度この湊に立ち寄ったことだろう。」 旅を通じて作者はいつも思う。「何かが変わったのか、何処かが変わったのか、自分が変わったのか、いや、何も変わってはいないかもしれない。海があり、湊があり、船があり、民家がある。そして、いつも立岩と裏山が見据えている」と。三好耕三の作品は、目に映る風景そのものを写し出しているばかりでなく、風景とその周辺や奥底に横たわる「時のながれ」や日本人の「心」をも現していると言えるだろう。 本展では、1998年から2004年までの青森、秋田、山形、新潟、兵庫、島根などの海岸を、8x10インチ判の大型カメラでスナップし、全紙サイズの印画に仕上げた、40余点を展示致します。 出展作家: |