濱田祐史

Broken Chord

2017.5.10(水) - 7.8(土)
PGI

濱田祐史

Broken Chord

2017.5.10(水) - 7.8(土)
PGI

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

 

写真というメディウムを通して「見ること、見えないこと」についての考察をテーマに「Primal Mountain」、「photograph」を2013年に発表。その後、2014年から、色と画像のレイヤーで独特のイメージを作りだすC/M/Yシリーズの制作を始めます。このシリーズでは、ポラロイドを使って写真の要素である色や形、構成を一度解体して新たなイメージに出会っていくという実験的な手法を用いています。「見ること、見えないこと」というテーマに加え、濱田の作品制作におけるもう一つの軸となりました。

また、こうしたコンセプトの組み立てや手法への強いこだわりを持ちながら、それに溺れることなく、何をどう写し見せるか、という本来写真が持っている魅力に向き合い、撮影と制作を続けています。

本作「Broken Chord」は、欧州文化首都(European Capital of Culture)のプログラムで滞在した、ポーランドのヴロツワフでの体験を元に制作されました。

ポーランドは、何度か国境線が変化するという歴史的経験を持ち、東側社会主義国家の中ではハンガリーとともにいち早く民主化への模索がなされた国です。
作者はこの滞在で、日本では経験することのできない他文化との地続きの感覚や、人々の習慣や考え方の中にしばしば垣間見える歴史の痕跡に触れる体験をしました。

「用済みになったポスターの上に繰り返し新しいポスターを貼り重ねてできた層や、ドイツ式のレンガ造りの建物を基礎にして、幾重にも違う色や材質で塗り直された壁」に、その土地の持つ時間や記憶の蓄積を見出し、それらを拾い集め、帰国後、自身の記憶の蓄積をミックスさせてイメージを焼き付けていきました。
モノクロームでの作品発表は初めてとなる濱田は、ストレートなプリントのほかに、2台の引伸機を使った多重露光の作品も制作。カラーではなくモノクロームを使用すること、多重露光とストレートなプリントをミックスして見せることで、現実の中に潜む見えない存在(「その土地の時間や記憶の蓄積」)を印画紙の上に見事に表現しています。

 

ゼラチンシルバープリント、47点を展示いたします。

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“Broken Chord”

僕にとって重要なものは必ずしも歴史的に重要な場所や象徴的な場所にあるとは限らない。むしろ見慣れた場所や見逃してしまいがちな空間の隙間で凝縮されたものと出会うことがある。

2016年の9月から約1ヶ月間ポーランドのヴロツワフに滞在する機会があった。
ポーランドは過去に何度か国境線が変化しており、滞在していたヴロツワフもかつてはドイツ領だった。滞在して数日経ったある日、用済みになったポスターの上に繰り返し新しいポスターを貼り重ねてできた層や、ドイツ式の煉瓦造りの建物を基礎にして、幾重にも違う色や材質で塗り直された壁を何度か目にしていることに気がついた。それはまるでこの場所の時間や記憶の蓄積の様だった。

市内を走るバスの中、気が付けばうたた寝をしていた。
この土地のどこかのいつかの時代のイメージが頭の中で水面の光の様に現れては消えてを繰り返した。その偶発的な重なりや集積のイメージに肩を軽く押されながら白黒フィルムをカメラに入れて、いくつかの街や国境線へ撮影に出かけた。

撮影した後に自身が滞在した記憶の蓄積も作品の鍵になると考えた。そこでいつものプリント作業に加えて、2台の引伸機を使って1枚の印画紙に焼き付ける多重露光の作品も同時に制作することにした。そこには”重ねられたものが持つ複雑な単純さ”と”重ねないものにある単純な複雑さ”があり、それらが混ざり合うことで新たな層になればと思い幾枚かの写真を束ねてまとめた。

濱田祐史

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濱田祐史作品展” Broken Chord “の開催に合わせ、トークショーを行います。

 

当日は金沢美術工芸大学美術科芸術学専攻講師の星野太氏(美学/表象文化論)をお招きし、”exposure”というキーワードをもとに本作を紐解いていくと共に、過去の作品や東欧に滞在した体験にも触れるトークショーを予定しております。

 

日時:2017年 6月17日 (土) 16:00〜 @PGI

定員:30 名  参加費:500 円(要予約/当日お支払い下さい)

 

下記よりお申し込みいただけます。

濱田祐史 × 星野太 トークセッション

 

濱田祐史(はまだ ゆうじ)

1979 年大阪府生まれ。2003 年日本大学芸術学部写真学科卒業後出版社に勤務、2006 年より フリーランスフォトグラファーになる。写真をメディアとして「『見る』とはどういうこと なのか、『見えない』とはどういうことなのか」という問いかけをもとに撮影、制作をしている。 

近年の主な個展に、PGI(東京)にて「Pulsar + Primal Mountain」(2013) 「C/M/Y」(2015)、ミュンヘンのGALLERIE f 5.6での「photograph」「Primal Mountain」(2016)がある。

2014年、ヴェヴェイ(スイス)のフォトフェスティバル” Images” にてPrimal Mountainのインスタレーションを展示。2015年、エクスアンプロヴァンスフォトフェスティバル(フランス)、ニューヨークのコンデナスト ギャラリーでのグループ展に参加。

2014年に初の写真集 「photograph」がParis Photo/ApertureのFirst Photobook Award 2014にノミネートされるなど、東京を拠点に活動し国内外で作品発表をしている。

2015年には印刷技術も写真表現のひとつとした写真集「C/M/Y」 、スイスにて滞在制作した作品集「BRANCH」が出版された。

 

 

PGI Exhibitions

2015.8.18 10.17 「C/M/Y」
2013.5.7  6.29 「Pulsar + Primal Mountain」