井津建郎

作家活動50周年記念 井津建郎作品展 「もののあはれ」

2021.11.24(水) – 2022.1.21(金)
年末年始休業:12/25–1/5
PGI

井津建郎

作家活動50周年記念 井津建郎作品展 「もののあはれ」

2021.11.24(水) – 2022.1.21(金)
年末年始休業:12/25–1/5
PGI

  • ©Kenro Izu

  • ©Kenro Izu

  • ©Kenro Izu

  • ©Kenro Izu

  • ©Kenro Izu

  • ©Kenro Izu

  • ©Kenro Izu

 

 

【年末年始営業日のお知らせ】
12月25日(土)より1月5日(水)まで、年末年始休業休業とさせていただきます。

 
 
PGIでは初めてとなる、井津建郎の作品展、「もののあはれ」を開催致します。

井津建郎は1971年に21歳で渡米し、ニューヨークでスタジオ運営する傍ら、50年にわたり、祈りや、人間の尊厳をテーマに、14×20インチの超大型カメラでの撮影とプラチナプリントによる作品の制作、発表を続けてきました。

1979年に初めて訪れたエジプトで、人智を超えたものの存在に魅せられ、世界各地の聖地、石造遺跡や建造物の撮影を始めました。1993年には、初めてカンボジアを訪れ、アンコールワットを撮影、そのスケールの大きさと、場に漂う包み込むような独特の空気から『特別な場所』と語るアンコール遺跡群を7年掛けて撮影します。2003年にはブータンで、人間の内に聖なるものを見出し、インド、ガンジス川流域では、全てを受け入れ、信仰の中に生きる人々にカメラを向けました。

本展「もののあはれ」は、祈りや人間の尊厳をテーマに世界各地を撮影してきた井津が、近年、初めて日本国内で取り組んできた能面のシリーズと、磐座や神社周辺の自然環境に漂う神聖性を観察した作品、コロナ禍の自粛生活の中で、自宅周辺の道端に人知れず咲き、そして散っていく名も知らぬ草花に「儚き美」を見出し、自然光の中で撮影した静物写真で構成し、日本独特の美的理念、美意識である、「侘び寂び」や「もののあはれ」を表現したものです。

人々が崇める場としての聖地から、次第にそこに集う人々の祈り、人間の内になる信仰に興味を移した井津にとって、初めて能面と対峙したとき「奥深くも美しい精神性を感じた」のは自然なことだったのではないでしょうか。

能楽は、室町時代から650年以上続く日本の伝統芸能ですが、この世界最古の演劇は、ただ歴史があるだけでなく、台本や演出のほか、実際に使用する能面や装束までもが当時から受け継がれている極めて特殊な演劇です。

この完成された工芸品を改めて写真に撮ることの意義に疑問を感じたと語る井津ですが、修復を重ねた塗装が艶かしい光沢を放ち、長い年月を経て刻まれた傷が凄みを見せる能面と一人座敷で対峙することで、長い歴史の中で綿々と受け継がれてきた魂が宿り、その内にある哀艶さまでもが見事に引き出されています。

ゼラチンシルバープリント作品約25点を展示致します。

『もののあはれ』という言葉は古代から人の生活の一部として存在していたと言われるが、平安時代から鎌倉時代までに、自然の移ろいや人生の機微にふれたときに感じる情趣を意味するとされ、人生や移り変わる季節に対して、繊細な美や感覚を和歌に託することが多く、貴族社会を中心に洗練されてきたといわれる。

 

数年前に兵庫県、丹波篠山の能楽資料館でいくつかの能面に出会った時初めて心が高鳴り、写真に撮って作品にしてみたいと願うようになった。

 

能面を見たときに感じたのも、中世から代々能面を受け継がれてきた所有者(多くは能楽家)の想いや、打った能面師の意図、そして何よりもその能面で演じられてきた役が数百年の演舞の間に染み込んだ執念のように、奥深くも美しい精神性を感じたからだ。

 

しばしば幽玄という言葉で表現される能楽は侘び、寂びと並んで日本の文化の代名詞のようなミニマルな美がまさに能楽の真髄とも思われ、それが600年以上も続いてきたのである。

70歳近くなってやっと能面、能楽の美を”発見”した瞬間だった。

 

至近距離で対面すると中には塗装が艶かしい光沢を放つ面、あるいは部分的に剝落して木地が見え、それが凄みを与えている面、修復塗装を重ねたためか、粒状の表面になった面、それぞれが生きてきた歴史を物語っているかのようである。

 

それら個性的な能面と一対一で、障子越しの柔らかい光が包む座敷で見つめ合う作業は贅沢でもあるが、しかし自己内面を凝視されて否応無しにそれを受け止める、ヒリヒリするような緊張感を強いられる時間でもある。見るということは即ち見られる、ということを改めて感じた。

撮影が進むにつれて美しい能面それぞれが生の悲しみの種々の形と見え始めた。

 

私の『もののあはれ』は能面作品を軸として、人知れず路傍に咲き、そして枯れていく草花の静物作品と古代磐座や後世の神社をとりまく聖域の気配を観察した作品などで構成し、私なりの解釈としての“生の儚さに見る美”を写真で表現した。

 

2021104

井津建郎

 

 

東京都千代田区一番町2503-3263-1752

《作家活動50周年記念展》

◾️「アジアの聖地 ―井津建郎 プラチナ・プリント写真展― 2022年1月5日(水) – 5月22日(日)  

 会場 半蔵門ミュージアム        月・火 休館

    東京都千代田区一番町25   tel 03-3263-1752

 

◾️井津建郎写真展「地図のない旅 2021年11月23日(火) – 12月5日(日)  会期中無休

 会場 ルーニィ・247ファインアーツ

    東京都中央区日本橋小伝馬町17-9 さとうビル4F   tel 03-6661-2276

 

◾️未発表作品展1975-2016井津建郎 地図のない旅 2021年11月17日(水) – 11月28日(日)  月・火休館

 会場 iwao gallery

    東京都台東区蔵前2-1-27 2F  tel 03-5846-9313

 

井津 建郎(いづ  けんろう)

1949年大阪府生まれ。日本大学芸術学部に学んだ後渡米。以来50年間ニューヨークを拠点として作品制作と発表を続けて現在に至る。30数年間にわたって『聖地』を14×20インチのカメラで撮影、プラチナプリントによる表現を続ける。

1993年にアンコール遺跡撮影のため初めてカンボジアを訪れる。以後インド、ラオス、ネパール、インドネシア、ブータン、中東などアジアの聖地の撮影を精力的に行う。カンボジアでの取材で、多くの子供たちが地雷の犠牲になっている現実を目の当りにし、非営利団体フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーを設立。カンボジアとラオスに小児病院を建設と運営するなど多くのプロジェクトに携わる。

作品はニューヨーク・メトロポリタン美術館はじめ、アメリカを中心に多数の美術館に収蔵されている。作品集は2017年に「Seduction」、2018年に「Eternal Light」、2020   年に「Requiem」、2021年に「Fuzhou -the forgotten land」など17冊の写真集を出版。