風の旅人vol.37 「時と悠」風の旅人vol.37 「時と悠」風の旅人vol.37 「時と悠」

風の旅人vol.37 「時と悠」

1,257円

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商品説明

「悠」
 人の背後に水をかけて、身を清めることでみそぎし、みそぎを終えて、心の伸びやかとなった状態をいう。心に鬱屈がなく、心安らかで、つつましくあれば、その想念もはるかになる。( 白川静 『字統』より)
 古今東西、様々な不条理に対応しながら生きてきた人間は、意識しやすい短期的な価値観に左右されながらも、根本のところでは、日頃はあまり意識しない長期的な価値観に基づいて生きているように思われます。
 また、当たり前のこととして長く実践し、必要に応じて修正し続けてきたものにこそ、人間ならではの尊い智慧が宿っている場合が多いように感じられます。しかしながら人間は、長く続けるうえで安易に形式に頼ってしまうこともあります。差し迫った必要性のなかで生まれたものが、習慣化され反復されるなかで惰性状態となり、本来の在り方を失いますが、そうした形骸化は、生命力の減退へとつながっていきます。
 ”みそぎ”というものは、惰性状態によって心のなかに厚くこびりついた角質を取り除き、心を伸びやかにし、覚醒させる瞬間です。人間は、時おり、そうしたリセットによって自らを新しくし、生命力を蘇生させることができます。
 短期の視点で、”新しさ”を追いかけるのではなく、長い時間のなかで物事を見て、自分が生き生きと感じられるものを探すこと。そうしたスタンスを取り戻さないかぎり、心が縮こまり、益々目先のことにとらわれ、傲慢になっていくでしょう。
 悠久の時の中で物事の移り変わりを眺め渡すと、平穏な状態が続くことはあり得ず、いろいろな波があるのが自然です。時おりめぐってくる試練に対して、自分を整え、乗り越えていく姿にこそ、人間の本分が現れるのだと思います。
 様々な逆境を乗り超えてきたものに触れることは”みそぎ”のようなものです。それじたいの悠々とした在り方が、私たちの心を、厳粛に、つつましく、安らかにし、目先の小さな分別から開放され、救いに感じられることがあります。
 
雑誌『風の旅人』編集長 佐伯 剛

【 表紙・裏表紙 】
望月通陽
【 写真 】
Native Nations
photos/ エドワード・S・カーティス
Carry Me Home
photos・text / デビー・フレミング・キャフェリー
今、ここにある旅1 Country Songs
photos・text/ 奥山淳志
今、ここにある旅2 NEIGHBORHOOD
photos・text/ 鷲尾和彦
今、ここにある旅3 島の時間
photos・text/ 山下恒夫
今、ここにある旅4 あの時の未来
photos・text/ 西山尚紀
今、ここにある旅5 金のエンジェル
photos・text/ 有元伸也
【 文章 】
【連載】電気の働きに満ちた宇宙? 第7回 不可解な、火星の樹枝状模様
text / デビット・タルボット
【小特集】写真の可能性
text / 佐伯 剛
私たちはどこから来たか、私たちは誰か、私たちはどこへ行くのか
text / 田口ランディ
星を観る眼
text / 蛭川 立
冬のフランス
text / 管啓次郎
信仰は信仰である
text / 前田英樹
取り返しのつかない話
text / 姜 信子
標準化できない視覚のミソ
text / 小栗康平
隠された知
text / 森 達也
旅人の心得 5
text / 皆川充
コニカミノルタ フォトプレミオ座談会
座談会出席者 / 佐伯剛 中藤毅彦 野村恵子 エリック


出版:ユーラシア旅行社, 2009/6年

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