井津建郎は1971年、21歳のときに渡米し、以後約40年以上にわたり、祈りや、人間の尊厳をテーマに発表を続けてきました。
1979年に初めて訪れたエジプトで、人智を超えたものの存在に魅せられ、世界各地の〈聖地〉、石造遺跡や建造物の撮影を始めます。その後もブータンやインドなどを訪れ、人間のうちに宿る神聖を見出し、信仰に生きる人々にカメラを向けてきました。
1983年から始めた14×20インチの超大型カメラによる撮影を始めました。大判フィルムによる精緻な描写と、プラチナ・プリントによる豊かな階調で、聖地に漂う濃密な空気感と尊さが見事に表現されており、世界的に高い評価を得てきました。
時間をかけて対象と向き合い、一枚一枚丁寧に写された井津の作品にはそこに流れる時間と気配が漂い、それは見るものの想像力を掻き立て、我々の感情を揺さぶるのです。
本作「BLUE」は、聖地での撮影から離れ、ニューヨークのスタジオで撮影されたシリーズです。舞踏ダンサーをモデルに〈存在〉を表現した「Body」と、静物や、枯れた草花に美を見出した「Still Life」から構成された作品は、深い陰影による美が現れています。