旅の軌跡は中国全土に広がる。広州、マカオ、香港、スワトー、アモイ、上海、北京……。しかし、撮影地以外の具体的な旅行案内は皆無である。赤いオートバイが置かれたそこは蘇州であって、けれども蘇州であると知る必要は無いのかもしれない。むしろ心象風景を旅するように幻想的な光景が並ぶ。 本書はすでに中国に関する多数の著作をもつ著者が、1981年から2002年までの中国彷徨の旅の都度に撮りためた写真群の集大成である。一点一点の写真に付された著者ならではの白昼夢のようなコメントが、写真の光と呼応し、あるいは被写体を包み込む空気を伝える。丁寧な写真の印刷ともあいまって、島尾伸三ワールドが全開する稀有な写真集に仕上がっている。
出版:オリシス