ブックマットのススメ

 

基礎知識

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ブックマットとは, 窓を開けた表側のボード(オーバーマットやウィンドウマットと呼ばれています) と、プリントを支える裏側のボードを、本のように一辺をヒンジして綴じるマットの形式です。マットによる適度なマージンが作品をより引き立たせてくれます。

作品を長期保存するためにはマットの材料に良質な物を使う必要があります。多くの美術館やギャラリーでは一般にミュージアムボードと呼ばれる、綿の繊維で作られたボードや、国産のピュアマットという綿繊維とパルプ混のボードを使用しています。 吸湿性があり、外気から作品を保護してくれます。 またプリントに直接触れることなく手軽に作品を扱えるので、物理的損傷の機会も大幅に減少します。

額装するときはブックマットをそのまま額に入れればよいので、入れ替えることを考えると極めて合理的といえます。 またマットをしてあればプリントとガラスの間に空間が出来るので、ガラスの雑菌による汚染やガラスとの癒着を防ぐことができます。

 

プリントサイズとマットサイズの関係

マットの幅は、3インチ(1inch=25.4mm)程度を目安に考えるとよいでしょう。それから単純に計算すれば、おのずとそのプリントにあったマットサイズは決まってきます。

 

プリントサイズとマットサイズのマッチング
    マットサイズ
    11x14 12x15 14x17 16x20 18x22 20x24 22x28 24x30






8x10
11x14
12x15
14x17
16x20
18x22
20x24

 


 

しかしこれは、あくまで標準的なもので、作品の内容や各自の好みで、自由にサイズを選ぶべきです。

美術館では、膨大な量の作品を効率よく保管するために、16×20インチ、20×24インチ、24×30インチ と最低限の種類に揃えるようにしているところが多いようです。

 

マットのレイアウト

縦使いと横使い

マットのレイアウトは、基本的に次の4通りになります。

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縦位置の写真にはマットも縦使いで、横位置の写真にはマットも横使い、というのが最も一般的です。

横位置の写真でマットが縦使いという組み合わせは、マットの大きさの割に写真が小さい場合に特に有効です。 この組み合わせのもう一つの利点は、マットが縦使いで統一されるため、 展示が整然とし、 展示壁面を節約できるということです。 欠点は、横位置の写真の場合、水平方向への空間的広がりが抑えられてしまいがちであること、展示が単調になりやすいということがあげられます。

横使いのマットに縦位置の写真という組み合わせは、あまり成功した例を見たことがありません。もちろん、駄目ということはありません。

被せと余白出し

プリントや台紙の余白を出さないでマットするとき、マットの窓とプリントの画面サイズが全く同じだと簡単にずれて余白が見えてしまったりします。 それを防ぐため、画面にマットが少しかかるように窓を抜きます。 この被せる量は、各辺 1.5〜2 ミリ程度で、もしプリントの余白があまり無い場合は、もっと多く被せるとよいでしょう。

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余白の幅を決めるのは慣れないと少々難しいかもしれません。この幅が1ミリ違うだけで作品の印象が変わってしまうほどです。目安としては 11×14インチのプリントを 16×20インチのマットにするとき、 余白を各辺5〜7ミリ程度にするとバランスが良いと思います。

余白を出す場合にイーゼルが歪んでいたりして直角がでていない場合は、その分修正して窓を抜かないと余白の幅が狂ってしまいます。

余白の幅が2〜3ミリぐらいと細い時は、余白を4辺とも均等に出すほうが見栄えがいいですが、もっと幅を広くとるときは下辺の余白を若干広くすると安定した印象を与えます。

 

偏芯

窓を完全に真ん中に抜くと、バランスが下に落ちて見えてしまうため、PGIでは窓を少し上に偏芯しています。

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この偏芯の度合いは、余白の上下が 46%:54% という割合を基準にしています。横位置の写真を縦使いでマットする場合はもう少し上に偏芯することもあります。

正方形の写真を正方形のマットに入れる場合は偏芯を控えめに48%:52% 程度にするとバランスが良いでしょう。

 

台紙へのマウントの是非

アンセル・アダムスをはじめ、アメリカ西海岸の多くの写真家はプリントをミュージアム・ボードにドライマウントしています。 そしてイメージの下にサインを入れ、余白を出した状態でマットしています。

これはプリントの平面性を保ち、また作品の価値をより高く見せるのに非常に効果的です。しかしドライマウントは一度貼ってしまうと、剥がすのは極めて困難です。事実上やり直しは出来ないと考えたほうがいいでしょう。そのためマウント作業は慎重に行う必要があります。 またドライマウント処理はプリントに直接高い熱をかけることから、その熱による保存性への影響を危惧する意見もあります。

 

いずれにしても、全ての処理は基本的に作家の判断でおこなわれるべきで、第三者が後から勝手な処理をすることは、できるだけ避けたほうが良いでしょう。

余白を断ち落としてドライマウントした作品は、取扱いに十分気をつけないと角や縁の乳剤が剥がれてしまうことがあります。これを避けるためにプリントの余白を残したままドライマウントすることもあります。

なお台紙にマウントしたプリントをマットするときは、裏のボードは薄手のものを使うとマットの切り口が浮くことなく、馴染みが良くなります。

 

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