竹之内祐幸

2015.3.4(水) − 4.28(火)
Photo Gallery International

竹之内祐幸

2015.3.4(水) − 4.28(火)
Photo Gallery International

  • ©Hiroyuki Takenouchi

  • ©Hiroyuki Takenouchi

竹之内祐幸は「もうひとつの視点」をテーマに日常の光景をスナップしながら、違和感や不自然さの存在をあぶり出していきます。スナップの手法を用いながらも、切り込むような鋭さというよりは、丁寧に、そして繊細な言葉を紡ぐように瞬間や場所に反応し、撮影しています。

前作「LIBERTY CITY」では自然と人工物の対比や都市の中の動物を被写体にその居心地の悪さや、不自然さを晒しだしました。今作では鴉を被写体にしています。
保育園の頃、鳥の絵に色を塗るのに好きな色を聞かれ「黒」と答えると「黒は鴉の色で鴉は怖い鳥だからダメ」と言われたこと、最後まで減らないまま残ってしまうクレヨンの黒色。そうした体験から作者は逆に鴉に親しみを覚え、また、幼心に、定まった価値観へ違和感や疑問を抱くことを覚えます。

 

写真には、目に見えたものをそのまま見る者に伝えるという働きだけでなく、写した写真家の探求する目には見えないところに潜む本質を浮かび上がらせる力があります。
テーマである「もうひとつの視点」とは、人間が共存する違和感や不自然さを見つめること。
竹之内祐幸は、目に見える表層のうちに潜むそうした本質を、写真を撮ることでさぐりながら、同時に、象徴することの不確実さも問いかけています。

 

小さいころ、保育園の運動会で、入場門にいろんな色の鳥の絵を描くことになり、ひとりひとり好きな色を言うことになった。赤とか青とか決まっていって、僕が「黒」と言ったら先生が「黒はダメ」と言った。まさかそんな答えが返ってくると思わなかったのでびっくりして、しつこく食い下がったけれど、「黒は鴉の色で、鴉は怖い鳥だからダメ」と言われてしまった。僕は無性に腹が立って、泣きながら怒った。結果的に黒い鳥の絵が描かれたのかどうかは覚えていないけど、クレヨンの中でも最後まで減らないまま残ってしまう黒とか、怖い鳥だって嫌われている鴉のことが、なんだか自分自身のことであるようで悲しかったのかもしれない。

 

 そんな記憶もすっかり忘れていた2013年のある日、代々木公園を散歩していたら鴉が羽を広げて日光浴をしていた。休日だったので周りにたくさんの人がいたけれど、お構いなしに気持ち良さそうにしている鴉がかわいくて、ちょうど持っていたカメラで撮影した。当たり前だけど鴉は、「嫌われている鳥」とか「怖い鳥」とかいう人間が勝手に抱いている印象とは無関係で、自由に楽しそうに過ごしているように見えた。そんな鴉を撮るのは楽しかった。代々木公園はもともと住んでいた家に近かったのだが、都内有数の鴉の生息地だと知って、それから通って撮り続けた。

 

 鴉について調べてみると、視力が非常に良くて、光の三原色に加え紫外線も見えていることがわかった。ということは、鴉同士はお互いのことを真っ黒ではなく、もっと違う色に見えているのではないかと思った。鴉が黒いから怖いとか、不吉だとかいう考え方は人間の目から見た勝手な思い込みで、それはちょっと違う視点に立ってみればまったく違うモノの見方になるんだと気付いて、何か昔の自分が肯定されたような気持ちになった。一元的なモノの見方をしてはいけないということを、鴉が教えてくれた。それから昔の写真を見返してみると、自分が表現したい思いを鴉が繋いでくれたように思えて、しっくりこなかったパズルがうまくはまっていくような感じがした。

(竹之内祐幸)

 

本展ではカラー作品約20点を展示いたします。

竹之内祐幸(たけのうち  ひろゆき)
1982年東京都生まれ。2008年日本大学芸術学部写真学科卒業。
グループ展:「Making, Marking, Mapping 〜次世代へのアプローチ」フォト・ギャラリー・インターナショナル(2009)
個展:「SEASONS」フォイル・ギャラリー(2010)
受賞:第31回写真新世紀佳作/受賞作家展(2008)、塩竈フォトフェスティバル特別賞(2009)