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©SATO Shintaro
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佐藤信太郎はこの15年の間に、非常階段の上から俯瞰してみる東京「非常階段東京」と、スカイツリーができることで変わっていく土地の歴史を撮影した「東京|天空樹 Risen in the East」の二作を発表しました。
世紀末の東京から2000年代へ突入し、都市の再開発はもちろんのこと、“ネット”においても、情報を収集するだけでなく個人がより気軽に発信する場へと、考え方もテクノロジーも大きく変化しました。そうした状況が看板のデザイン、盛り込まれる情報やサービスの種類、繁華街の在り方も大きく変えた15年だったと言えます。
また、事故や災害で景観が変化しています。特に、繁華街のように建物が密集した場所での火災というのは、その場所の外観だけでなく性格までも変えることがあります。
そして東京に関して言えば、6年後、2020年のオリンピックまでに更に新たな建設、開発が今まで以上に進むでしょう。
否応無く変わっていく生き物のような都市を記録することが、佐藤作品が持つ魅力のひとつでもあります。
とりわけ、目に見える都市の変化をただ写すのではなく、自身の全体的なテーマである「土地の持つ歴史や記憶と、それによって現れる特有の雰囲気(ゲニウス・ロキ、地霊)」を写し出す写真家であり、それこそが佐藤作品のユニークな所です。
今回、あらためて「夜光」シリーズを発表することについて佐藤は「日本では、100年たつと変化しているのは当たり前のこと。15年という時間は、変化していることと、変化していないことが同時に見られるちょうど良い、絶妙なスパンだったのではないか」と語っています。
「美しさとは程遠いような猥雑な場所が持つ特有の美しさ」というのは人間が欲望や必要に応じて作り出すものが持つ意図しない美しさだと思います。
美を意図しない場所、必要からしか本当の美は生まれない、やむべからざる実質が求めた独自の形態が美を生み出す、といったことを坂口安吾が言っていますが、それが「特有の(必要性が生み出した、美を意識しないところから生まれた)美しさ」だと思います。
その底にその土地の持つ歴史や土地が持っている固有の特徴、人間が作り出す場所の位置づけ、要するに地霊があるのでしょう。
人を寄せ集める俗悪なものが、必要性の持つ美しさを作り上げているとしたらそれほど興味深いことはありません。
(佐藤 信太郎)
本展ではカラープリント約20点を展示致します。
佐藤信太郎写真集「夜光 Night Lights」 オンラインストアでお求めいただけます
寄稿:上野 修
アートディレクション:林 琢真
判形:A4 変形 64 頁 上製本
出版:青幻舎
2014年10月下旬発売
予価:3,200円+消費税
【同時開催】
佐藤信太郎写真展 “The spirit of the place”
キヤノンギャラリー S
2014年10月31日(金)〜12月15日(月)
佐藤 信太郎 (さとう しんたろう)
1969年東京都生まれ。1992年東京綜合写真専門学校卒業。1995年早稲田大学第一文学部卒業。共同通信社に入社。2002年フリーランスとなる。 ■個展:「夜光」コニカプラザ(1998年 東京)、「非常階段東京」ギャラリー・ル・デコ(2004年 東京)、「TWILIGHT ZONE」フォト・ギャラリー・インターナショナル(2005年 東京)、「TOKYO TWILIGHT ZONE −非常階段東京−」フォト・ギャラリー・インターナショナル(2008年 東京)、「東京|天空樹 Risen in the East」フォト・ギャラリー・インターナショナル(2012年 東京)、「林忠彦賞受賞記念写真展」富士フィルムフォトサロン・周南市美術博物館(2012年)、「都市百景」千葉市民ギャラリー・いなげ(2013年 千葉)、「The spirit of the place」キヤノンギャラリーS(2014年 東京)
■グループ展:アサヒ・アート・フェスティバル2006「Tokyo East Perspective写真展 墨東写真」(2006年 東京)、「Between Reality and Illusion」マーティー・ウォーカー・ギャラリー(2007年 ダラス アメリカ)、「風景劇場-空間に繰り広げられるドラマ」北海道立旭川美術館(2009年 北海道)、「日本写真協会賞新人賞受賞作品展 Crown on the Earth」(ベルリン、ベオグラードなど巡回 2011年)他。
作品は清里フォトアートミュージアム(北杜市)でコレクションされている。
■受賞:2009年日本写真協会賞新人賞、2009年千葉市芸術文化新人賞、2012年林忠彦賞