川田 喜久治

見えない都市

2006.10.12(木) - 11.10(金)
Photo Gallery International

川田 喜久治

見えない都市

2006.10.12(木) - 11.10(金)
Photo Gallery International

  • ©Kikuji Kawada

50年以上にわたり写真を撮り続け、多彩な才能を繰り広げる川田喜久治氏の作品は、日本国内はもとより海外でも常に注目されてきました。2003年春に東京都写真美術館で開催された個展「世界劇場」では、氏がこれまでに撮り続けて来たいくつものシリーズの作品が一堂に展示されたことで、“川田ワールド”が明らかになったことは記憶に新しいところです。

「見えない都市 invisible city」は、2001年から2006年までに撮影された作品です。2003年の個展「世界劇場」の最終項目にカラー作品「Eureka 全都市 ファントム」がありましたが、そのときすでにこの「見えない都市」はテーマの中に繰り入れられていました。しかし、アメリカの9. 11の事件を機に作者の中で、都市というもののありさまがだいぶ変化していきました。それから毎年、作者はこの日に都市を撮影し続けています。今回の「見えない都市」は、崩れながら再生するさまざまな都市での想像的なドキュメントであるといえます。

「さまざまな文明を反芻する精霊たちがあらわれるのが、この物質都市を映す鏡のなかの写真都市かも知れません。この見えそうで見えない不明の都市の正体を見ようとするには、常によりそう反都市への鏡も意識しなければなりません。そのリアルな同時性に感応する反射鏡も必要でしょう。美しいドキュメントはつね に反ドキュメントへの鏡を友としているように」と作者は語っています。

マルコ・ポーロが世界を旅して、砂漠の覇者、フビライカーンにさまざまな空想都市の様子を報告したというカルヴィーノの夢幻的でリアルな小説、「Le città invisibili 見えない都市」からの少なからず影響を受けたという、川田喜久治氏の写す新たな都市への探求を楽しんで頂きたいと思います。

川田 喜久治(かわだ  きくじ)
1933年茨城県に生まれる。1955年立教大学経済学部卒業。新潮社に入社。『週刊新潮』の創刊(1956年)より、グラビア等の撮影を担当。1959年よりフリーランス。 「VIVO」設立同人(1959〜61年)。

主な個展に「ラスト・コスモロジー」タワー・ギャラリー(横浜 1995年)、「ゼノン ラスト・コスモロジー」フォト・ギャラリー・インターナショナル [以下P.G.I.](東京 1996年)、「カー・マニアック」P.G.I.(東京 1998年)、「ユリイカ 全都市」P.G.I.(東京 2001年)、「川田喜久治展 世界劇 場」東京都写真美術館(東京 2003年)、「地図」P.G.I. (東京 2004年12月-2005年2月)、「川田喜久治写真展 Eureka 全都市 Multigraph」東京工芸大学写大ギャラリー(東京 2005年)がある。