原直久
「柘榴」
2026.5.22(金) - 7.11(土)
PGI
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©Naohisa Hara
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PGIでは原直久作品展「柘榴」を開催いたします。本展では、作家が1970年初頭より長年にわたり取り組んできた同名のシリーズより、8×10インチの大判カメラによって撮影された作品を展示いたします。
写真家・原直久はパリやイタリアの山岳都市など、ヨーロッパ各地を大判カメラで撮影した都市風景作品で知られています。近年は、急速に変わりゆくアジアの都市を撮影した「アジア紀行」シリーズを継続的に発表してきました。
原は、都市風景の制作と並行して、果物などの静物を中心としたクローズアップのシリーズにも長年取り組んできました。本展「柘榴」は、作家の父が自宅の玄関先に植えた柘榴の木を主題としています。季節とともに変化し、実を結び、やがて内部を露わにするその姿は、原のクローズアップの視線において決定的なモチーフとなりました。
長年にわたり撮影されながらもこれまで発表される機会のなかった本シリーズは、本展にて初めてまとまったかたちで公開されます。8×10インチによる精細な描写は、生命の豊穣と衰退、内と外といった相反するイメージを内包しながら、多様な表情を見せ、被写体の細部に新たな発見をもたらすでしょう。
また本展では、銀塩プリント、プラチナプリントおよびインクジェットプリントといった複数の技法による作品を展示し、それぞれのプロセスが生み出す陰翳の違いもあわせてご覧いただけます。
原直久が長年向き合い続けてきた「柘榴」というモチーフ。その凝視の積層がもたらす、静謐でありながらもどこか妖しい世界を、ぜひご高覧ください。
ステートメント
フォーカシンググラスに魅せられて
私の写真を語る上で大事な幼児体験がある。我が家に壊れてもう撮影の出来なくなった骨董品と言った方が良いような手札くらいのスプリングカメラがあり、絞りとシャッターを開けてフォーカシンググラス越しに眺める逆さまの風景を見るのが不思議で楽しく、ジャバラを繰り出すとかなり近くまでピント合わせが出来ることに興味津々であった。したがって写真を撮る、楽しむというよりは光学メカニズムに対する興味が先であったように思う。
この不思議なフォーカシンググラスとの再会は、この体験から暫くして写真を専攻した大学や、アルバイト先で、4×5インチのビューカメラでパッケージや小物と対峙したときである。何か楽しく性に合い、後の風景撮影にもこれを持ち出すようになった。
だが決定的なフォーカシンググラスとの出逢いは1971年、初めて8×10インチのディアドルフにレンズを装着して、冠布の中で覗いたフォーカシンググラスの美しさに感動した瞬間であった。その時、今後の制作活動は経済的にも大変なことも多いと思うが8×10インチを中心に頑張ろうと心に誓った。
今回の展示の「柘榴」は4×5インチでも撮影していたが、改めて8×10インチで永年撮影してきたものである。当たり前の話だが、実物より大きくして見ると、今まで見たことのない新しい発見や感動が生まれてくるものである。
展示の中心となるのが、父が玄関先に植えた柘榴の木、綺麗な実をつけだし、やがて見事に実り、その一部分が縦に怪しげに裂け、中から人を誘惑するように果実を覗かせる姿である。その様は、私のクローズアップシリーズのモチーフにこれ以上のものはないとまで思わせた。また、忙しさにかまけて、撮影できないでいると、だんだん萎んできて、別の表情を見せてくれるから興味深い。
今回の「柘榴」はこれまで発表する機会こそなかったが、最も長期間取り組んできたテーマである。銀塩、プラチナ、それに画像処理とインクジェットによる陰翳を楽しんで頂けたら幸いである。
原 直久
原 直久(はら なおひさ)
1946年千葉県松戸市生まれ。1969年日本大学芸術学部写真学科卒業。1971年日本大学芸術研究所修了。
1976年~77年文化庁派遣芸術家在外研修員としてフランス、ドイツで研修。1984年~85年日本大学長期海外研究員としてパリを拠点に研究および制作活動を行う。2016年 日本大学を定年退職。
近年の主な個展に、「アジア紀行:上海」(PGI 2022年)「蜃気楼 IV」(PGI 2018年)「時の遺産」(国立歴史博物館、台湾台北 2017年)「アジア紀行:北京・胡同-拆」(PGI 2013年)「Nostalgia」(BOMギャラリー、韓国ソウル 2010年)「アジア紀行:台湾」(2009年)「アジア紀行:韓国」(2005年)「欧州紀行」(2003年)「ヴェネツィア」(2000年)「ヨーロッパ:プラチナ・プリント・コレクション」(1997年)[いずれもフォト・ギャラリー・インターナショナル(現PGI)で開催]などがある。
グループ展に「東京都コレクション」(東京都写真美術館 2026年)「建築×写真 ここのみに在る光 展」(東京都写真美術館 2018年)「第7回eco展」(韓国ソウル 2012年)「第6回eco展」(韓国ソウル 2010年)「未来を担う美術家たち DOMANI・明日展 2008 <文化庁芸術家在外研修の成果>」(国立新美術館 2008年12月~2009年1月)「Viva! ITALIA」(東京都写真美術館2001年)「プラチナ・プリント ― 光の誘惑」(清里フォトアートミュージアム 2000年)「ヘルテン国際写真フェスティバル ’99」(ヘルテン、ドイツ 1999年)などがある。