濱田 祐史

『 K 』

2019.12.12(木) - 2020.2.5(水)
冬季休廊 12.25(水) - 1.7(火)
PGI

濱田 祐史

『 K 』

2019.12.12(木) - 2020.2.5(水)
冬季休廊 12.25(水) - 1.7(火)
PGI

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

  • ©Yuji Hamada

濱田祐史の最新作となる『   K   』は、『C/M/Y』、『R G B』に続く、色と光を考察する三部作の最後の作品となります。

『C/M/Y』(2015)では色の三原色をテーマに、デジタルポラロイドを用い、膜面をシアン、マゼンタ、イエローに分離し、イメージと色を再構成しました。「画像/イメージとは何か」という問いに端を発し、写真における色と形を考察する作品となりました。

光の三原色をテーマにした『R G B』(2018)では、制作当時に入手可能なネガフィルムを集め、実体を写さず影を撮影することで「〇〇は何色」という既成概念から鑑賞者を解放し、フィルムの再現性を最大限に生かして色を標本するような手法を用いました。

本作のタイトル『   K   』は、印刷で使用する四つの原色である、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(キー・プレート)の「K」、そして、色温度を示すケルビンの「K」です。

 

「当たり前に同一とされている事象の認識のズレを写真によって可視化して鑑賞者と共有すること」が、濱田作品のテーマの根底には常に置かれています。

本作では色をモチーフに、そのズレを描くことに挑戦しています。

誰もが共通する色を連想するような物や状況を被写体に選び、カラーとモノクロのフィルムで二度シャッターをきっています。二つの同じ被写体を写したネガを、カラーの印画紙に多重露光しました。

モノクロ画像とカラー画像が重なることで、プリントに現れる色は、現実の色よりも彩度がおち、普段私たちが思い浮かべる「色」とは異なる色が生まれます。また、撮影時のフィルム交換による時間のギャップが、実際のプリントに物理的なズレを生じさせています。

「見知っているものと違う」という違和感を写真で描くことで、個々人の認識や記憶、または時間の経過によって対他者ではなく個人の内でさえも変化する、ものを見る視線の多様さが表現されています。作品を鑑賞する私たちがそのことへ思いを馳せることで完成する作品ともいえるでしょう。

 

作者は「誰かの感じている色についての話は、夢の話と似ていてなかなか共有できない面白さがある。私はそう言った理解できるものと理解できないものとが同居しているものに「美しい矛盾」を感じる。」と語っています。

 

クロモジェニックプリント約30点を展示いたします。

『   K   』

 

 私が二十歳を過ぎた頃からだろうか、インターネットやデジタル技術の進展により、膨大な量の画像処理を生活の中で求められるようになった。今やテレビや新聞、看板だけでなく、SNSやネットニュースなどのあらゆるところで情報として写真が溢れている。その中で私は、写真と人間の心象との間にどのような相互作用が起きているのかを考えてきた。その上でここ数年は「写真における色」に焦点を当て制作をしてきた。

 

 2014年に発表した『C/M/Y』では、色の三原色をテーマに、プリントを物理的に三層に分解した写真を再構成し、新たな色と図像を制作した。2018年発表の『R G B』では、光の三原色をテーマに、目に見えない光の色を求め、具体的なモチーフを撮影せずに、白い紙の上に落ちる影をカラーフィルムの再現力を頼りに標本を作るように制作した。この二つのシリーズは、photography(写真)を解体し、photon(光)+graphic(像)と捉え、『C/M/Y』はgraphic(像)、『R G B』はphoton(光)とし、それぞれの要素にあるカラー写真の可能性と向き合うための作品だった。

 

 第三部として制作した『   K   』は、印刷物のキープレートである黒の「K」であり、色温度を表すケルビンの「K」でもある。この二つの要素を写真に変換するために、白黒とカラーのネガ、それぞれで同じ光景を撮影し暗室で一枚の印画紙にプリントした。そうすることで私の中にある潜在的な記憶や認識のズレが「シロクロカラーシャシン」として現れた。

 

 色について人と話をしていると、それぞれ少しずつ見え方や感じ方が違っている。例えば、私とあなたが一緒に見た林檎の「赤」は、同じとは限らない。それは個人の認識や記憶の違い、時間の経過でも変化する。また色について調べていくうちに、雪の中に暮らすエスキモーは雪の色を単に「白」という1つの言葉で表さず、多くの「白」の表現を持っていることを知った。つまり民族や環境によっても色に対する認識や印象が大きく異なる。誰かの感じている色についての話は、夢の話と似ていてなかなか共有できない面白さがある。私はそう言った理解できるものと理解できないものとが同居しているものに「美しい矛盾」を感じる。

 

 私が誰かの見た色を完全に同じ様に見ることはできないことに気付き、色に対する自分自身の見え方があることを受け入れた上で、目の前の色を感じる光景を撮影した。この作品を鑑賞者が見たときにそれぞれの記憶の中で出会った「色」は私の想像を超えているに違いない。

 

2019.10.25

濱田祐史

 

濱田 祐史(はまだ  ゆうじ)

1979 年大阪府生まれ。2003 年 日本大学芸術学部写真学科卒業。東京を拠点に活動し国内外で作品発表をしている。

写真の原理に基づき概念を構築し、ユニークな技法で常に新しい試みを行う。

主な個展に『R G B』、『C/M/Y』(PGI、東京 ) 『photograph』、『Primal Mountain』(GALLERIE f5.6、ミュンヘン ) がある。

スイスのフォトフェスティバル Images(2014)、 フランスのエクス・アン・プロヴァンスフォトフェスティバル (2015)などに参加。

主な写真集に、 印刷技術も写真表現のひとつとした写真集『C/M/Y』(Fw:books、2015)、スイスに滞在して雪山登山の過程の記録を落ちている枝のみを撮影し制作した『BRANCH』(lemon books、2015)。2019年11月に『Primal Mountain』(torch press)が出版された。

 

 

PGI Exhibitions

2018.9.7 10.27 R G B
2017.5.10 7.8 Broken Chord
2015.8.18 10.17 C/M/Y
2013.5.7 6.29

Pulsar + Primal Mountain