高橋宗正

石をつむ

2016.3.10(木) − 4.28(木)
PGI

高橋宗正

石をつむ

2016.3.10(木) − 4.28(木)
PGI

  • ©Munemasa Takahashi

  • ©Munemasa Takahashi

「写真家は、カメラを間に置いて何かと向き合うことで作品をつくるものだと思います。そして展示をするということは、ぼくはこういうものとこんな風に向き合ってこう考えたんだ、と誰かに語りかけることだと考えています。」
 
PGIでは3月10日より、高橋宗正の個展を開催いたします。
 
PGIでの初めての個展となる本展では、2013年から2015年にかけて制作され、昨年写真集として発表された「石をつむ」シリーズからモノクロ作品約40点を展示いたします。
 
2010年に前作「スカイフィッシュ」を発表、その後2011年から宮城県山元町にて津波に流された写真を持ち主の元に届ける「思い出サルベージ」のプロジェクトに参加しています。
2012年からは、その中でもダメージが酷く廃棄されてしまいそうだった写真を捨ててしまうのではなく、離れた場所にいる人にも見てもらいコミュニケーションを生むことを目的として「Lost & Found project」を立ち上げ、各地で展示を開催してきました。現在も続くこれらの活動を始めて以降、自身の写真作品の制作はほとんど行っていませんでしたが、この活動がきっかけで、家族の写真、アルバムに触れる機会が増え、文化的なバックグラウンドや世代を超えて、人が写真を撮る意味についてより深く考えるようになります。そして山元町での活動で、高橋は大事な友人との出会いと、彼の自死による別れを経験しました。
私たち人間は言語を伝達の基本としていますが、言葉は口から出ては流れていき、記憶は時間とともに曖昧になります。本作ではそれらを言葉で書き残すのではなく、写真という視覚表現を媒介にして「友人の死」という体験と向き合った過程を、変化や死をテーマに集めた被写体を撮影して表現しました。
これまでの作品では、自身の物語は一切語らず、情報や説明を極力排除した写真/画像が鑑賞した人の中にどのように物語を生むのか、「写真と他者の認識」の構造を重視して作品を制作してきました。しかし本作では、自身の経験によって認識した個人的、具体的なものを形にし、見る人の記憶や経験に語りかけています。

高橋 宗正(たかはし むねまさ)
高橋宗正は、東京を拠点とする1980年生まれの写真家です。2001年に日本写真芸術専門学校を卒業し、2002年写真ユニットSABAにより写真新世紀優秀賞を受賞。2004年「hinterland」(art & riverbank 東京)を開催、2010年に初の写真集「スカイフィッシュ」を赤々舎から刊行し、同時に個展「スカイフィッシュ」をAKAAKAギャラリー(東京)にて開催。2011年より宮城県山元町で、東日本大震災における津波に流された写真を持ち主の元に届ける「思い出サルベージ」に副代表として参加。2012年からは「Lost & Found project」を立ち上げ世界中の12ヶ所で展示を開催してきました。そして2014年、「思い出サルベージ」と「Lost & Found project」での経験をまとめた「津波、写真、それから」を赤々舎より刊行。この本は同年のAnnouncing The Paris Photo–Aperture Foundation PhotoBook Awardsのカタログ部門にノミネートされました。2015年、震災以降ほとんどやってこなかった作品発表を再開し、デザイナーの塚原敬史と共に写真集レーベルVEROを立ち上げ5年ぶり2冊目の写真集「石をつむ」を出版しました。同年、オランダフローニンゲンにて行われたノーデルリヒト写真フェスティバル、大阪ビジュアルアーツギャラリーにて展示。