伊藤 義彦

時のなか

2010.2.18(木) - 3.31(水)
Photo Gallery International

伊藤 義彦

時のなか

2010.2.18(木) - 3.31(水)
Photo Gallery International

  • ©Yoshihiko Ito

「時のなか」は「パトローネ」シリーズの4作目となりますが、主に定点観察の方法で撮影し、日本古来の絵巻の特徴である時空間表現を参考にしなが ら、複数のプリントを裂き、貼り合わせて、再構成するモザイクの手法で制作しています。伊藤義彦は約10年、この手法で作品を制作しており、これらの作品は、従来のコラージュ手法とは異なる、作者独自の写真表現です。

 

作者は、池の中で泳ぐ鯉や動物園の檻の中でじっと動かないハシビロコウ(注*)、芝生の上を駆け回る子供といった被写体にカメラを向け、プリントを制作する過程で作者自身の時間を再構築します。

 

「過ぎ去ったこれまでの長い時間、これから来るであろう未来の長い時間、そして、現在の『あっ』と言う瞬間。私は、この『瞬間』に何とも不思議な思いを抱いている。」と語る伊藤は、独自の手法によってその「瞬間」をつなぎ、「連続した時間」という概念を可視のものにしていきます。

 

「時間と空間の切れ目の無い世界のなかで、様々なものを観察しながら過ごしている。変わってゆくものと変わらないもの。変わりつつあるけれど気がつかないこと。このようなことを思っていると、空想が頭の中で増殖する。誕生してから見続けてきたであろう網膜の記録やすでに忘れ去った夢の記憶など、これらを巻き戻し、順を追って並べてみたいなどと思ったりするのである。」と言う伊藤義彦の作品は、常に「時間」を意識し、また「時間」そのものを創作していると言えるでしょう。

 

(注*)コウノトリ目ハシビロコウ科の鳥ハシビロコウは、ぎょろりとした鋭い目を持っていますが、体に比べ頭・嘴が大きく、どこかユニークな印象を与えます。大型のハイギョを餌として好み、ハイギョが空気を吸いに水面に近くなったところを狙うため、大きな体で動き回り魚に警戒心を起こさせるのを避けるために数時間にわたってほとんど動かないことが特徴です。

 

今回は新作20余点を発表致します。

伊藤 義彦いとう  よしひこ)
1951年生まれ。東京綜合写真専門学校卒業。「The Shadow」展(西シェラン美術館、デンマーク 2005年)や「写真の現在2・サイトー場所と光景」展(東京国立近代美術館 2002年)、東京都写 真美術館、原美術館をはじめとする国内外の多数のグループ展で作品が展示される。近年の主な個展に「水のなか」P.G.I.(2006年)、「蓮の泡」 P.G.I.(2004年)、 「パトローネの中 — 観ること、観つづけること —」京都造形芸術大学Gallery Raku(2002年)、「パトローネ」P.G.I.(2000年)、「影のなか」P.G.I.(1998年)、「Contact Print Stories」ローレンス・ミラー・ギャラリー(ニューヨーク 1992年)がある。

 

 

PGI Exhibitions

2017年 箱のなか
2010年 「時のなか」
2006年 水のなか
2004年 蓮の泡
2000年

パトローネ

1998年

「影のなか」

1996年

「風と蝸牛」

1994年

「観ること・観つづけること」