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©Yoshinori Marui
圓井義典は、自分が住む日本を自身の目と足を使って見つめ直してみようと、2000年頃から日本各地を訪ね歩き、大型カメラによる撮影を始めました。このことは「私の中にあった世界像の、修正作業のはじまりでもあった」と作者は語っています。
「沖縄」は作者にとって、現在の国という単位で見るならば同郷であり、過去の歴史的側面や文化的側面を見るならば異郷であるという多重性をもつ場所 です。そのことによって、「沖縄」という地が、作者自身の今と、日本の今と、そして長い過去をつなぐ「くびき」のような場所であるとの思いから、作者は繰り返しその地を訪れ撮影を続けました。
古くは琉球王国として、中国をはじめ日本、朝鮮、東南アジア諸国との交易を通して、琉球独自の文化を育んだこの地は、日本への従属、第二次世界大 戦、米国による統治と日本復帰という数奇な運命をたどり、今なお米軍基地問題をはじめとする複雑な問題を抱えています。日本の近世—近代—現代をつなぐ重 要な鍵となった地、沖縄を、作者は真正面から見据えています。
喜屋武半島南部の喜屋武岬から摩文仁の断崖に至る海岸線は、珊瑚によって形作られた複雑な地形が続いています。作者はこの海岸線を歩き、歴史に翻弄された人々の痕跡が残る海岸線を、あたかも地形そのものをなぞるように、真上からカメラを向けて切り取る作業を淡々と続けています。
ニライカナイの神話の昔から今に続く長い歴史を持つ沖縄。潮が満ち引きを繰り返し、太陽の光りが波間に輝き、そして月が浜辺を照らしてきたこの島で、今、作者の目の前には、沖縄を取り巻く強者と弱者の論理が絡まりあった複雑な歴史の堆積する海岸線が遥かに延びています。
本展では、30余点のカラー作品(クロモジェニック・プリント)を展示致します。
圓井 義典(まるい よしのり)
1973年大阪生まれ。1996年東京藝術大学美術学部デザイン学科卒業。1997年東京綜合写真専門学校研究科卒業。東京綜合写真専門学校研究科助手および東京工芸大学芸術学部写真学科助手を経て、2006年より東京工芸大学芸術学部写真学科講師。
主な個展に「失踪」Gallery Floor 2(東京 1996年)、「Sight」かねこ・あーとギャラリー(東京 1998年)、 「新作展」ギャラリーQS(東京 1999年)、「新作展」exhibit LIVE(東京 2002年)、「新作展」現代HEIGHTS Gallery Den(東京 2002年)、「地図」exhibit LIVE (東京 2003年)、「沖縄」exhibit LIVE (東京 2005年)がある。
多数のグループ展にも出品。
PGI Exhibitions
2016年 | 「点-閃光」 |
2011年 | 「光をあつめる」 |
2008年 |
「海岸線を歩く− 喜屋武から摩文仁まで」 |