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2021年1月4日、鏡ごしのセルフ・ポートレイト、川崎
©Takashi Arai -
2015年1月2日、正月の皿、川崎
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2021年6月2日、淡竹(はちく)、川崎
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2022年2月5日、隔離ホテル、横浜
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2022年5月1日、ノリア、川崎
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2022年9月21日、りんご、スオメンリンナ島、ヘルシンキ
©Takashi Arai
新井卓は、写真黎明期の技法であるダゲレオタイプを使って表現する数少ない写真家の一人です。
写真の原点を探る中でダゲレオタイプを知り、試行錯誤の後に技術を習得。被写体に出会った時の感覚を、時間と空間を超えて見るものに生々しく伝えることのできる<小さなモニュメント>として、自身のメディアとしてきました。
2008年に渡米した際に購入したMichael Lightの『100 Suns』(1945年から1962年、地下実験以前の核実験を記録した写真集)と、2010年に着手したプロジェクトのコアになる第五福竜丸。この二つが大きなきっかけとなり、「核」に興味を持ち、撮るべき対象に出会っていきます。
写真が常に過去であること、自身の作品も例外ではなく、「確実に過去になっていく」。そのことに端を発した「わたしたちは未来を予測することができるか」というシンプルな疑問がきっかけとなり制作された、若者たちのポートレイトと聴き取りによる作品、「明日の歴史」(2019年)が記憶に新しいですが、新井は、コンセプトの中で常に、社会や他者との対話、歴史に根付く個人の在り方を、作品を通して模索してきました。
本展では、このたび新しく発刊される著書『百の太陽/百の鏡 写真と記憶の汀』を記念し、「日日(にちにち)の鏡」と題し、『毎日のダケレオタイプ』シリーズから作品を展示いたします。
写真家/美術家として活動を続けながら2011年から取り組んでいる『毎日のダケレオタイプ』は、震災後の時間と重なりながら、新型感染症の世界的なパンデミックや、社会情勢が不安定になっていく中、連綿と続く日々を記録しています。
「日々という言葉には、だんだん蓄積していったり、発展していったりする語感がありますが、朝起きてダゲレオタイプを撮るたび、いつもゼロからスタートするという感じがあり、始めたときから変わりません。その感覚は、頻繁にリセットボタンが押されるような2010年代以降の日常の、よりどころのなさに近づいていく気がしています。」と語っています。
『百の太陽/百の鏡 写真と記憶の汀』は、文章と写真による初めてのエッセイ集となります。言葉に向き合うことは、自身の身体やパーソナルな世界に向き合う時間でもありました。身体、現実と非現実、汚穢と向き合う生。写真を撮る日日と地続きに生み出される言葉を、展覧会と本とで是非ご高覧ください。
日日(にちにち)の鏡
あなたはだれですか? 電話の向こう側で、男が尋ねていた。なにをなさっているのですか──長年、客たちとの無数の会話によって鞣されたその声はやわらかく、不意に聴覚の無防備なところへ届いてしまうので、わたしは答えに窮するのだった。
新井卓『百の太陽/百の鏡 写真と記憶の汀』岩波書店、二〇二三年(七月発売予定)
写真を撮っていても、何をしていても、都市の暗渠に川が息づくように、それと知れず言葉が流れている。
パンデミックのさなか、本を書く機会に恵まれた。〈わたし〉について、と説明するほかないその本は写真・映像のこと、旅のこと、忘れ得ない人々、ままならない身体とうつろう境界についての文章で構成されている。
過去二十余年の異なる時間と場所から聞こえる〈わたし〉の声、その脈絡のなさ、景色の不確かさに身をすくめながら、言葉とイメージを送信する。
陽は昇り、今日の世界が姿をあらわす──太陽と鏡のあわいに。鏡のなかに、今日の〈わたし〉をさがす。
新井卓
日時 2023年8月4日(金) 午後6時 ~ 会場 PGI
定員 15 名
参加費 1,100 円(税込)
新井卓作品展「日日(にちにち)の鏡」開催に合わせ、「写真と記憶の汀で」と題し、写真家の清水裕貴氏をお招きし、トークイベントを開催します。
写真家で、小説家でもある清水裕貴さんは、PGIでの個展『微睡み硝子』で、風景を見つめ続けるものとして硝子を擬人化し、その視線から土地の持つ記憶を写し出しました。小説においても、『花盛りの椅子』(2022年)では家具が持つ記憶を、そして近著『海は地下室に眠る』では土地や絵画の記憶を見事に描きました。
今回出版された新井卓さんの『百の太陽/百の鏡 写真と記憶の汀』は、初のエッセイ集となります。
写真家が書くこと、写すことについてお話を伺います。
お申込みはSquareもしくはメール(info@pgi.ac)にて
→ Square オンライン決済にてお申込み、お支払い下さい。
→メール 件名を「新井清水トーク」としていただき、氏名、人数、電話番号を明記の上、お送り下さい。
・参加費は当日店頭にてお支払い下さい。
・申込先:info@pgi.ac (クリックするとメーラーが立ち上がります)
新井卓 新刊「百の太陽/百の鏡」岩波書店
日時 2023年7月29日(土) 午前10時 ~ 会場 PGI
定員 15 名
参加費 1,100 円(税込)
新井卓作品展「日日(にちにち)の鏡」開催に合わせ、「コロナ後の世界」と題し、歴史学者で京都大学人文科学研究所の藤原辰史氏をお招きし、トークイベントを開催します。
2011年から撮り始めた『毎日のダゲレオタイプ』シリーズで、震災以降頻繁にリセットボタンが押されるかのような拠り所ない日常を写してきた新井さんと、著書『言葉をもみほぐす』や、コロナ禍において注目された論考『パンデミックを生きる指針』など、積極的に発言をしてきた藤原さんに、「いま」の時代を生きる精神についてお話しいただきます。
お申込みはこちら→ Square
1978年神奈川県川崎市生まれ。現在、川崎とベルリンを拠点に活動する。
写真の原点を探るうち最初期の写真術ダゲレオタイプ(銀板写真)を知り、試行錯誤ののち同技法を習得。対象に出会ったときの感覚を、時間と空間を超え見るものに生々しく伝えることのできる〈小さなモニュメント〉として、自身のメディアとしてきた。核の歴史に興味を持ち始めた2010年に第五福竜丸の船体や元船員に出会い、その後、福島、長崎、広島、と撮るべき対象に自然に巡りあう。近年は映画制作、執筆、共同研究など学際的活動を展開。2014年英国ソースコード・プライズ(現Solas Prize)、2016年第41回木村伊兵衛写真賞、2018年第72回サレルノ国際映画祭短編映画部門最高賞ほか賞歴多数。作品はスミソニアン博物館、ボストン美術館、サンフランシスコ近代美術館、東京国立近代美術館、東京都写真美術館、ギメ美術館ほか内外美術館に収蔵されている。単著に『百の太陽/百の鏡──写真と記憶の汀』(岩波書店、2023年7月刊行)、『MONUMENTS』(PGI、2015年)など。
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