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©Rie Suzuki
P.G.I. 10 Days Exhibition と題するこのシリーズでは、若手や新人、中堅の写真家、あるいはポートフォリオ作品などを紹介する企画展で、テーマのみならず表現方法や展示方法など個性的な作品を発表するものです。
「晴れた日の太陽が学校の廊下にあたってキラキラまぶしく光っているのを、階段の陰から見ていました。みんなが賑やかに歩き回るその日だまりに、ほんの一瞬静かな空気が流れました。」そのような光景を、写真を撮るたびに思い出すという作者は、光や温度、自分が感じたままの時間や場所をとらえようとしている。
「時間はいつも同じように流れていて、建物や木や草はずっとそこにあります。それらがギュッと止まり、ゾワゾワするような輝きを発することがあります。」作者はその瞬間を待ち続け、シャッターを押し、印画紙に焼き付けたいと言う。
モノクロームプリント作品、30余点を展示。
私が六年間すごした中学と高校の校舎。
教室のドアの向こうの廊下には外を遮る壁が無かった。
晴れた日にはそこから日が射し込み、まぶしく光っていた。私はいつも、その廊下を、日影になった階段から見つめていた。
階段の影にはひんやりとした風が吹き、肌の表面にほんの少しだけ、廊下に降り注ぐ太陽の温度を感じることができた。
写真を撮っていると、その時の温度や風景を思い出す。
みんなが廊下を賑やかに歩き回る中、ほんの一瞬静かな空気が見える時があった。
毎日変わらない廊下には、そんな時間が日常の喧噪と共に流れていたのだ。
今日もいつものように時間が流れる。
建物や木が街の喧噪の中に静かに存在している。ふと目を止めた時、それらが、ギュッと停止して緊張感を帯びた輝きを放つ風景へと変化する一瞬が見たくて私は写真を撮る。
鈴木 理恵(すずき りえ)
1986年 名古屋市出身
現在、武蔵野美術大学造形学部映像学科在籍
写真展
2007年 武蔵野美術大学造形学部映像学科写真ゼミグループ展「hue」(目黒区民ギャラリー/東京)