圓井義典
写真という寓意
2025.2.5(水) - 3.15(土)
PGI
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©Yoshinori Marui
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《作家在廊予定》
2月14日(金) 13時〜
2月22日(土) 13時〜
2月28日(金) 13時〜
PGIでは2月5日より、圓井義典のPGIでは5回目となる個展を開催いたします。本展では新作となるシリーズ「写真という寓意」から約40点を展示いたします。
圓井義典は東京芸術大学美術学部デザイン科在学中より写真作品の制作を始めました。
初期作、「地図」(2003年)や「海岸線を歩く」(2008年)では、知覚できる世界についての新しい発見、つまり知覚世界についてより一層想像力を膨らませるきっかけを、眼前の事物の細部描写に見出してきました。光を主題とした「光をあつめる」(2011年)の頃から、写真術と事物とのかかわりそのものを考えることが、より直接的に知覚できる世界について想像を膨らませるきっかけになる、と考えるようになります。そうやって考えてきた一つの結果として「点−閃光」(2016年)があり、そこから派生して前作「天象(アパリシオン)」(2020年)が生まれました。
本作「写真という寓意」は、世界の汲み尽くせない豊かさをテーマとする寓意作品です。写真が想起する記憶と現実の差異、そこから広がる未知の可能性を見つめる本作では、新型コロナウイルス感染症の流行以降に撮影された、明と暗、光と翳、美と醜、都市と地方、人工物と自然物、生老病死、真面目と遊びといった私たちをとりまくものの持つ複雑で多様な性質を象徴する写真で構成しています。
写真という寓意
スマホにたまった写真を見返していたある日、それらの写真がとてもよくできた喩えのように思えた。
写真一枚一枚がある事物や出来事、世界の視覚的断片だとすれば、つないだ娘の手のぬくもりやSNSで目にしたコメント、そんな私自身の日々の記憶ひとつひとつも、私自身がとらえた世界の断片のようなものだといえるだろう。
ところで、自分で撮ったことさえ忘れていた写真や他人の写真を見て、偶然そこに新しい何かを見出したり、写された人の知らない一面を見出したりすることは、きっと誰にでもある経験にちがいない。もしそうだとすると、そして私たちの記憶も写真と同じく世界の断片のようなものなのであれば、自らの人生やこの現実に対するこれまでとはまったく違ったイメージを、私たち自身が忘れていた記憶の中に、そして他人の記憶の中にある時ふと見出す可能性がいつでも潜んでいるということではないだろうか。
ここにある写真たちは、ここ数年のあいだに偶然何かの拍子に撮影されたもの、私の記憶そのもののような存在だ。なぜそれを撮りたいと思ったのか、誰が撮ったのかということすら(中には娘たちが撮ったとおぼしきものもある)忘れてしまったものさえ含まれている。
それらの写真をあらためて見返す行為は、私にとってはいつもは通らない道を歩いてみるような、あるいは久しぶりのパサージュを散策するような、そんな新しい発見のためのちょっとした冒険でもある。
それによって実際に何かが見つかるかどうかはあまり重要ではない。むしろ、未知の可能性が、汲みつくせない世界の断片が、今も目の前のどこかに隠れているにちがいないということをあらためて確かめることこそが、私にとっては何よりも大切なのだ。
2024年11月
圓井義典
[2025年3月15日(土)] 午後4時 ~ 会場:PGI
圓井義典 ✕ 伊藤博明(哲学者) トークイベント
圓井義典作品展「写真という寓意」開催に合わせ、ルネサンス思想史・芸術論がご専門の伊藤博明氏をお招きして、寓意の歴史に触れながら、本作「写真という寓意」の魅力に迫ります。
前半【レクチャー:ヨーロッパ美術における寓意】
講師:伊藤博明
後半【トークセッション:見えないものを描く/写す】
登壇者:伊藤博明 × 圓井義典
定 員 20名
参加費 1,500 円(税込)
伊藤 博明(いとう ひろあき)
1955年北海道美幌町生まれ。1978年北海道大学文学部哲学科卒業。1984~86年イタリア政府給費留学生としてフィレンツェ大学に留学。1986年北海道大学大学院文学研究科博士課程修了。埼玉大学教養学部教授、副学長を経て、現在、専修大学文学部教授。同大学院文学研究科長。埼玉大学名誉教授。放送大学客員教授。専門はヨーロッパの思想史・芸術論。主な著書に『綺想の表象学――エンブレムへの招待』(ありな書房、2007年)、『ルネサンスの神秘思想』(講談社、2012年)、『ヨーロッパ美術における寓意と表象』(ありな書房、2017年)、『象徴と寓意――見えないもののメッセージ』(集英社、2018年)がある。
【お申し込み方法】
店頭、Eメール、またはSqaure(下記QRコード)よりお申し込みください。定員に達し次第受付終了いたします。
※お電話でのお申し込みは受け付けておりませんのでご了承下さい。
→Eメールよりお申し込みの際は件名を「圓井 トーク」とし、お名前、人数、ご連絡先を明記の上お申込み下さい。
参加費は当日受付にてお支払い下さい。
申込先: MAIL. info@pgi.ac
→ Square でのお申込み。オンライン決済にて参加費をお支払い下さい。
*Squareでチケット購入後のキャンセルにつきましては、イベント前日までにご連絡いただいた場合に限りご返金させていただきます。当日のキャンセルはご返金できませんのでご了承下さい。
圓井 義典(まるい よしのり)
1973年大阪生まれ。1996年東京芸術大学美術学部デザイン科卒業。1997年東京綜合写真専門学校研究科修了。2020年より東京工芸大学芸術学部写真学科教授。
大学在学中より写真作品の制作を始め、2000年ごろから現在のテーマである「写真×哲学」に連なる作品を発表してきました。
風景の匿名性を問うた「地図」(2003)、歴史が土地にもたらした意味を探る「海岸線を歩く – 喜屋武から摩文仁まで」(2008)、そして改めて写真と光のもたらす美を追求した「光をあつめる」の三作を経て、「見ること/写すことによって世界は克明になるが、そのことによって同時に無意識に捨て去っているものがある」ということを、見る人と共有するための試みを続けている。
主な個展に「失踪」Gallery Floor 2(東京 1996年)、「Sight」かねこ・あーとギャラリー(東京 1998年)、 「新作展」ギャラリーQS(東京 1999年)、「新作展」exhibit LIVE(東京 2002年)、「新作展」現代HEIGHTS Gallery Den(東京 2002年)、「地図」exhibit LIVE(東京 2003年)、「沖縄」exhibit Live & Moris(東京 2005年)、「海岸線を歩く—喜屋武から摩文仁まで」フォト・ギャラリー・インターナショナル[以下P.G.I.](2008年)、「光をあつめる」P.G.I.(2011年)、「点—閃光」PGI(2016年)、「天象 (アパリシオン)」PGI(2020年)などがある。
「沖縄・プリズム 1872-2008」(東京国立近代美術館 2008年)など多数のグループ展にも参加。